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北の大地の資源を活かす

地下資源調査所ニュース vol.15 no.2

1999年4月30日発行(季刊)
北海道立地下資源調査所広報誌


地球に優しい環境浄化
−微生物が世界を変える−

わたしたちのまわりには,微生物と呼ばれる目に見えない生物が多数存在し,様々な役割を果たしています。

微生物は古くから人類に利用されています。例えば,パン・酒・味噌・醤油・納豆などは,微生物を利用して作られた食品です。また,下水処理場でも微生物は活躍しています。

近年,海洋油汚染対策からラードの分解といった問題に至るまで,様々な分野の環境浄化に対し,微生物を利用する研究が行われています。

微生物を利用した資源開発

鉱山等では資源開発の目的で微生物を利用しており,バクテリアリーチングと呼ばれる方法が知られています。これは,バクテリアを利用し,効率よく金属を溶出させ,排水される溶液から有用金属を回収する方法です。実際に,低品位鉱石から銅やウランなどの資源が回収されています。岩手県の土畑鉱山では年間10トン程度の沈殿銅を回収しています(写真1)。

微生物を利用した環境浄化

現在注目されているのは,バイオレメディエーションと呼ばれている方法です。これは,微生物の性質を利用して有害物質を分解・無害化し,環境を浄化するものです。この過程は,化学反応によるものと比較して高温・高圧を必要としないため,安全で省エネルギーであり,また,微生物による生成物が,人工的に作られたものに比べて分解しやすく,環境への安全性が高いことなどのメリットがあります。

この応用として,坑廃水処理への利用があります。現在,岡山県の柵原鉱山では,鉄酸化細菌を利用して鉄を酸化し,pHを調整して水酸化第二鉄として沈殿させ,無機凝集剤として利用しています。また,岩手県の松尾鉱山では,坑廃水の中和処理を効率的に行うため,鉄酸化細菌を利用しています。

道内には,坑廃水処理に微生物を利用している例はありません。しかし,足寄町湯の滝(写真2)で発見されたマンガン酸化菌のように,今後道産子の微生物が活躍する可能性があります。

当調査所では,休廃止鉱山鉱害防止対策の一環として,微生物を利用した方法を検討しています。道内にはマンガン鉱床が多く,閉山後もマンガンを含む坑廃水を排出しています。そのような鉱山では,黒色の“二酸化マンガン”鉱物を沈殿させている例(写真3)が認められます。このように,坑廃水中にもマンガン酸化菌が存在している可能性があり,その発見も期待されます。マンガン酸化菌を利用すると坑廃水中からマンガンのみを沈殿分離除去することが可能となり,それと同時に,マンガン資源としての利用も期待されます。


弟子屈町川湯地区で深層温泉水の開発に成功!
−平成10年度試すい探査事業−

当調査所では,北海道立地下資源調査所条例に基づく「試すい探査」を実施しています。この試すい探査は,昭和27年から毎年実施し,数多くの成果をあげている事業です。

平成10年度の試すい探査は,釧路支庁管内弟子屈町川湯地区で実施しました。弟子屈町での試すい探査は,昭和55年度(100℃・333l/分),昭和63年度(49.2℃・240l/分)に続く3度目で,今回の探査の結果から42.3℃・421l/分の湧出を確認できました。

ここで弟子屈町内の温泉について少し触れておきます。弟子屈町は,阿寒国立公園に含まれる摩周湖・屈斜路湖・硫黄山などの景観地に恵まれています。また,温泉地も多数あるため,道内外から多くの観光客が訪れています。

温泉地はそれぞれ特色を持ち,町中心部には摩周温泉(旧弟子屈温泉)があり,その周辺にはとう別温泉と奥春別温泉があります。屈斜路湖周辺には和琴温泉・コタン温泉・池の湯温泉・砂湯温泉・仁伏温泉,少し離れて道東を代表する川湯温泉があります。ほとんどの温泉水は成分濃度が薄い弱アルカリ性ですが,川湯温泉だけは成分濃度の濃い強酸性の温泉水です。

温泉資源が豊富な弟子屈町では,温泉熱利用も盛んに行なわれています。暖房・融雪・農業・水産・プール利用の他に,全国的にも珍しい木材乾燥も行なわれています。

また,町・民間から多数の施設への給湯も行なわれていて,一般住宅・別荘の約500戸に給湯されています。蛇口をひねると温泉が出てくるとは夢の様な話だと思いませんか。この他に牛・馬の浴用施設まであり,まさに温泉の町と言えるでしょう。

今回のボーリングの対象地域となった川湯温泉について,もう少し詳しく紹介します。川湯温泉の開設は明治19年で,硫黄鉱山で働く人のための旅館から始まったと言われています。現在では,年間の宿泊者数40万人,利用者数115万人を数える温泉地となり,その魅力の一つに,北海道でも珍しい強酸性の泉質ということがあげられます。この熱源・温泉源は硫黄山(アトサヌプリ)にあり,ここから温泉街に向かう狭い範囲の地下の浅い部分にだけ温泉水があることが,これまでの調査・研究によってわかっています。最近では,温泉地の発展とともに泉温の使用量の増加傾向が見られます。

このような状況を踏まえ,弟子屈町では川湯温泉の温泉資源枯渇時に備えて,将来的に安定供給が見込める地下深部の温泉水を調査・開発することを計画しました。このような経緯から当調査所にボーリング調査が依頼され,平成10年度の試すい探査に着手することとなりました。

ボーリング地点は温泉街から1km程度東方に位置し,掘削探査深度を1000mとしました。調査は5月12日から11月30日までの延べ111日間を要しました。ボーリング調査の結果から,坑井地質は上位から第四系のカルデラ堆積物(軽石や砂礫),新第三紀の尾札部層(溶岩や火砕岩)と夕映川層(火砕岩や泥岩)から構成されていることが明らかになりました。坑内物理検層の結果から坑底の地温が92.2℃であることを確認し,温泉水は深度705m,深度905m,深度975mの3箇所に賦存していることも明らかになりました。この温泉水は,汲み上げると3箇所から温泉水が混合し,自噴では深度705mの温泉水だけが湧出することも明らかになりました。泉質分析の結果,川湯温泉とは異なる成分を含み,泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉(弱アルカリ性)で,神経痛や筋肉痛に効き目のある温泉です。温泉水中の水素と酸素の同位体を分析した結果,この温泉水は雨水や雪などの天水を起源としていることも明らかになりました。

弟子屈町では,この新泉源の今後の利用について,早くも地元住民や川湯温泉の温泉組合から意見・要望を収集しています。当調査所にとっても新泉源が伝統ある川湯温泉の活性化につながれば非常によろこばしいことです。また,浴用利用のみならず,浴用利用後の排湯熱利用も進めてほしいと思います。


インタ−ネットで地学情報検索
―その3 国立国会図書館のオンラインによる目録検索サービスについて―

前回までは,“麦飯石”の文献について,Geolis Searchで地質ニュ−スno.390がただ1件検索されました。次に,検索された雑誌がどこに所蔵されているか,NACSIS Webcatと北海道大学付属図書館の蔵書検索の方法をお知らせしました。

今回は,国立国会図書館ホ−ムペ−ジから,同じ雑誌の所蔵検索をしてみましょう。

国立国会図書館のホ−ムペ−ジには「図書館員のためのペ−ジ」がありますので,メニューの一番下にある“雑誌記事索引採録誌一覧”を使います。これは,1984年1月受け入れ分以降1999年4月1日現在の『雑誌記事索引』に採録されている雑誌の一覧です。ここで,地質ニュースの所蔵の有無を検索してみましょう。地質ニュ−スの「ち」を選びますと「ち」から始まる雑誌のリストが記録されていて,「地質ニュ−ス(工業技術院地質調査所)Z15-176 497(199601)〜」が見つかります。誌名には,国立国会図書館の請求記号と,採録開始巻号(採録開始年月)および採録中止巻号(採録中止年月)が記録されています。継続記号は“〜”です。継続して採録されていますので,お目当てのNo.390の所蔵があるかも知れません。

国立国会図書館は,北海道では北海道立図書館と札幌市中央図書館に対してオンラインによる目録検索サービスを提供しています。加えて,地域の公共図書館とオンラインで接続され,国立国会図書館から下記の4つのサ−ビスが受けられます。

  1. 本を借りて読む。
  2. 特定の本のコピーを入手する。
  3. 国立国会図書館の目録またはデータベースを調べる。
  4. 資料などに関する問合せ(レファレンス)を申し込む。

これらのサ−ビスを利用し,地質ニュースNo.390の「岸本 文男(1987):麦飯石について」の箇所のコピ−を入手し,他に麦飯石について書かれた書物が無いか調べてみましょう。

文献の末尾に掲載のある参考文献あるいは引用文献などで,論文公表までに利用した資料がわかります。ここは,自分の調べたい文献を見つけだすための大切な記述部分です。

該当の文献には,参考文献等の掲載はありませんが,記載内容に『“麦飯石”の名前が初めて登場するのは,中国の明の薬学者李 時珍の著作“本草綱目”(1578)52巻の中であり,「麦飯石は,匂いが柔らかに甘く,無毒で,主として全ての悪性の腫瘍を治す」』と記載がありました。他にも『医王石・太陽石・アルカライトと医王石以外販売者が勝手に命名している奇怪な商品』と記載がありました。

では,麦飯石の名前が初めて登場する“本草綱目”はどこに所蔵されているのか。今までの検索方法を使って所蔵先を検索してみましょう。キ−ワ−ドは「本草綱目」です。

北海道大学蔵書検索結果では,該当件数3 件,NACSIS Webcatの該当件数は13 件ありました。

VT:本草綱目啓蒙 : 重訂一般注記
巻1-3: 序. 緒言. 水. 火. 土. 巻4-7: 金. 玉. 石. 巻8-9: 山草, 上下. 巻10-11: 芳草. 隰草上. 巻12: 隰草下. 巻13: 毒草. 巻14:蔓草, 上下. 巻15-17: 水草. 石草. 苔草, 雑草. 巻18-22: 麻麥稲. 稷栗. 菽豆. 造醸. 葷辛. 巻23-24: 矛滑. 菰菜. 巻25-26: 五果. 山果. 巻27-29: 夷果. 味果. [ラ]. 巻30-31: 香木. 喬木. 巻32-34: 灌木. 寓木. 苞木. 雜木. 服錦. 器物. 巻35-36: 卵生, 上下. 巻37-39: 化生蟲. 濕生蟲. 龍蛇. 巻40: 有鱗魚. 無鱗魚. 巻41-42: 龜鼈. 蚌蛤. 巻43-45: 水禽. 原禽. 林禽. 山禽. 巻46-48:畜類. 獸類. 鼠類. 寓類. 怪類. 人部

上は,北海道大学の所蔵内容の画面と内容です。

この内容から,“巻4-7: 金. 玉. 石”に麦飯石の記載が有りそうです。

次回は,本草綱目についてです。


この春,2つの特殊地質図を刊行

上図は,恵山岬から積丹岬までの沿岸域の底質と陸域地質を表現しており,今後出版する報告書「北海道沿岸域の地質・底質環境-2-(西南北海道海域)」の付図に相当します。北海道沿岸域を大きく5つに区分し,その最初として平成9年に「太平洋西海域(襟裳岬〜恵山岬)」を刊行しており,今回は“第2弾”ということになります。

泥や砂,礫および岩盤の分布状況,深層水利用の有望海域,各漁協の共同漁業権の範囲,海底ケーブルの敷設位置,海流の方向などが表現されています。

北海道では,1995年の兵庫県南部地震の教訓から,全道の活断層の調査を開始しました。下図は,昨年公表されたNo.1:増毛山地東縁断層帯の続編にあたり,国の地震関係基礎調査交付金を受けて1996年から1999年に実施した函館平野西縁断層帯の調査結果をまとめたものです。

この活断層図では,最近10万年以降に活動した活断層を示すとともに,最新の活動時期や活動間隔に関する情報も盛り込まれています。地域の地震防災を考える基礎資料として利用されることを期待します。


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〜当調査所が関係する出版物〜


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