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有珠山の活動状況及び対策状況に戻る


泉質の状況調査(道立衛生研究所)

  1. 調査方法

    (1)調査年月日:
    平成12年5月9日〜11日の3日間にわたって現地分析および試料の採取を行った。
    (2)調査源泉:
    壮瞥温泉を中心に6源泉とその周辺の2源泉(滝之町源泉と蒼水閣源泉)について行った。
    (3)分析方法:
    各源泉から動力揚湯された温泉水は、現地にて泉温、pH、二酸化炭素、炭酸水素イオンを分析した。併せて、持ち帰ってから分析するため各種項目毎(硫化水素、重金属、チオ硫酸、アンモニア、ラドンなど)に試料の前処理を行った。各分析は鉱泉分析法指針に準じて行った。

  2. 分析結果

     今回、調査した壮瞥町7源泉と虻田町1源泉の化学成分等の分析結果を過去の分析結果と併せ、表1に示す。これらの源泉の湧出形態は全て動力揚湯で、滝之町源泉と蒼水閣源泉を除く他の6源泉の掘削深度は175m以下の浅井戸である。一般に、有珠山周辺の温泉水は源温泉水に近接する洞爺湖から浸透した地下水が混入し、その割合により種々の泉質を有すると考えられている。
     
    (1)噴火前後における8源泉の化学成分等の変動
     6号泉、9号泉、C泉、滝之町源泉および蒼水閣源泉において、噴火後の溶存物質総濃度(ガス成分を除く)は噴火以前のそれと比較し、17〜36%低下し、主要陰イオンの中では塩素イオンと硫酸イオン濃度にその傾向が強く認められる。従って、6号泉と9号泉において、陰イオン組成が各々Cl>SO4>HCO3型 からHCO3>SO4>Cl型、Cl>HCO3>SO4型からHCO3>Cl>SO4型へ変化し、その 結果、泉質名も変化したことになる。
     一方、11号泉、川南泉およびクリスタル泉において、噴火後の溶存物質総濃度にそのような変化は無く、むしろ川南泉の溶存物質総量は増加し、特に塩素イオン濃度の増加が認められる。その結果、川南泉の陰イオン組成はCl>SO4型からCl型へ変化し、医治効能にも影響を及ぼすことになる。
     また、個々の成分については6号泉、9号泉、11号泉および滝之町源泉において、遊離二酸化炭素が噴火後増加したり、6号泉、川南泉およびクリスタル泉において、高温にて最も揮発しやすい水銀が噴火以前と比較し、噴火後0.09〜1.25μg/kgと高い濃度で認められた。なお、飲用基準として水銀は、0.002mg/日と定められており、本調査で確認された最高値1.25μg/kgは、通常の飲料では問題にならない数値であった。
     その他、有珠山周辺の温泉水中のヒ素濃度は火山地帯を反映してか元々高いものの、6号泉、川南泉およびクリスタル泉において、水銀程ではないが噴火後若干高めの傾向が認められる。さらにマグマの発散物や火山噴出物、基盤岩石からの供給が推定されるラドンについても測定を試みたが、その濃度は道内の温泉水で観測されるレベルと同程度で、特に高い傾向は認められない。

    (2)8源泉の化学成分等の現況
     鉱泉を飲用に供する場合、公衆衛生上の安全確保を図る見地からヒ素、フッ素、銅、鉛、水銀および遊離二酸化炭素の6成分についてはその濃度により飲用量に制限がある。本調査の結果、ヒ素(HAsO2)濃度から、6号泉、11号泉、川南泉、クリスタル泉、C泉および滝之町源泉の飲用量は大人一人一日、各々、540、480、540、200、480、860mLと制限され、飲用は食後にする必要がある。

    (3)まとめ
     火山活動に伴う温泉水成分の変動については、地理的、あるいは時間的要素などが関与するため、不明な点も多い。本調査で認められた有珠山周辺の温泉水の溶存成分総量の経時的な減少は、温泉水の汲み上げに伴う地下水の混入割合の増加とも考えられ、今回の噴火による影響と判断するには時期尚早と思われる。その因果関係を明らかにするには観測点を絞った上で、今後とも主要成分を含め、火山活動と密接に関連していると考えられる遊離二酸化炭素、硫化水素等のガス成分、水銀、ヒ素、ラドン等の微量成分について、定期的に調査する必要があると考える。

表1 有珠山周辺温泉における化学成分等の分析結果

  湧出形態採水年月日泉質名液性pH蒸発残留物
(g/kg)
溶存物質d
(g/kg)
Na+
(mg/kg)
K+
(mg/kg)
Ca2+
(mg/kg)
Mg2+
(mg/kg)
Cl-
(mg/kg)
SO42-
(mg/kg)
HCO3-
(mg/kg)
No.16号泉動力揚湯1981.7.14ナトリウム−塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.74.1864.8531098.0144.8162.173.2886.11142.01034.0
1982.5a6.73.671955.0105.0132.060.4797.7906.7884.5
2000.5.9ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉中性低張性温泉6.62.5073.095623.851.1146.754.4373.9539.51134.0
No.29号泉動力揚湯1986.6.20ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.63.0393.666707.0101.7155.6107.8750.6599.71008.0
2000.5.9ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.52.0382.723396.949.1187.573.8280.3339.51222.0
No.311号泉動力揚湯1994.9.8ナトリウム−硫酸塩・塩化物泉弱アルカリ性低張性高温泉7.63.8704.293913.3131.7183.676.9722.61294.091.0
2000.5.9ナトリウム−硫酸塩・塩化物泉中性低張性高温泉6.64.0544.358851.1151.5233.9104.7721.61356.0676.4
No.4川南泉動力揚湯1999.3.2bナトリウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性温泉6.73.0363.438829.044.7198.038.31113.0488.0502.2
2000.5.10ナトリウム−塩化物泉中性低張性高温泉6.73.4823.725924.847.7203.532.51320.0511.1463.3
No.5クリスタル泉動力揚湯1999.3.2bナトリウム−塩化物泉中性低張性高温泉7.04.1904.7951291.070.9229.631.61781.0653.9433.4
2000.5.10ナトリウム−塩化物泉中性低張性高温泉7.24.5484.6831238.072.2199.148.21867.0580.0365.6
No.6C泉動力揚湯1958.11.15ナトリウム・カルシウム−塩化物泉中性低張性高温泉7.04.2394.3081077.058.0281.943.01817.6568.1195.2
2000.5.10ナトリウム−塩化物泉中性低張性温泉7.43.3733.412927.857.6169.123.81346.0392.6317.0
No.7滝之町泉源動力揚湯1985.2a6.62.605735.035.9104.540.5489.2335.71257.0
1989.9.14ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物泉中性低張性高温泉6.82.1622.846539.226.8148.462.4429.3318.71109.0
2000.5.11ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物泉中性低張性高温泉6.61.6272.081385.621.9107.437.9286.1242.9780.9
No.8蒼水閣動力揚湯1993.6.28bカルシウム−硫酸塩泉弱アルカリ性低張性温泉7.62.2012.18519.51.9486.911.618.01435.073.4
2000.5.11cカルシウム−硫酸塩泉弱アルカリ性低張性温泉7.61.9621.80481.60.9428.413.625.91157.061.0

  採水年月日F-
(mg/kg)
HS-
(mg/kg)
S2O32-
(mg/kg)
NH4+
(mg/kg)
Fe2+
(mg/kg)
Mn2+
(mg/kg)
Al3+
(mg/kg)
Hg
(μg/kg)
Pb
(mg/kg)
Zn
(mg/kg)
Cd
(mg/kg)
Cu
(mg/kg)
H2SiO2
(mg/kg)
HBO2
(mg/kg)
CO2
(mg/kg)
H2S
(mg/kg)
HAsO2
(mg/kg)
Rn
(10-12Ci/kg)
No.16号泉1981.7.140.20.20.01.03.21.3n.d.n.d.0.002n.d.n.d.0.001264.541.4239.40.50.4
1982.5a0.22.60.80.0120.008230.540.441.40.11.3
2000.5.90.30.00.00.64.21.40.1210.30n.d.0.006n.d.0.012147.317.3418.90.00.848.9
No.29号泉1986.6.200.20.00.00.64.10.50.002n.d.n.d.n.d.n.d.0.002195.133.9387.60.31.0
2000.5.90.30.00.00.45.40.80.879n.d.n.d.0.008n.d.0.002149.314.9611.60.00.332.7
No.311号泉1994.9.8n.d.0.10.00.32.20.8n.d.0.03n.d.0.0360.000n.d.236.037.240.50.01.0
2000.5.90.20.00.01.23.21.10.2040.01n.d.0.006n.d.0.007226.328.9246.50.00.919.0
No.4川南泉1999.3.2b0.40.00.0n.d.n.d.0.10.020n.d.n.d.0.002n.d.0.016172.050.4188.80.00.7
2000.5.100.60.10.00.2n.d.0.0660.0531.25n.d.0.006n.d.0.014162.656.7162.70.30.88.7
No.5クリスタル泉1999.3.2b0.40.00.00.20.61.00.010n.d.n.d.n.d.n.d.0.003219.979.293.30.01.2
2000.5.100.60.10.40.14.70.40.9190.09n.d.0.023n.d.0.021231.269.457.00.22.16.7
No.6C泉1958.11.150.80.30.8146.2111.30.8
2000.5.100.60.00.6n.d.n.d.0.0080.2770.03n.d.0.002n.d.n.d.149.854.536.40.00.931.0
No.7滝之町泉源1985.2an.d.12.80.46.4400.155206.433.2217.80.00.7
1989.9.140.30.00.00.15.70.60.0200.02n.d.n.d.n.d.0.014175.928.5184.00.20.5
2000.5.110.40.00.00.33.00.60.079n.d.0.0010.017n.d.0.042197.314.9399.70.00.58.0
No.8蒼水閣1993.6.28b0.30.00.1n.d.1.10.10.1n.d.n.d.n.d.n.d.n.d.33.72.66.20.0n.d.
2000.5.11c1.30.00.0n.d.0.90.20.0330.01n.d.0.007n.d.n.d.28.54.82.60.00.007e33.6
a:北海道立地質研究所分析、b:北海道薬剤師会公衆衛生検査センター分析、c:源泉近くの貯水槽にて採水、d:ガス成分を除く、e:Asとして、−:不明もしくは未測定

陽・陰イオン毎の主要各成分およびその組成の変化グラフ


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