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有珠山の活動状況及び対策状況に戻る


泉質の状況調査(道立衛生研究所)

  1. 調査方法

    (1)調査年月日:
    平成12年7月12日〜13日の2日間にわたって現地分析および試料の採取を行った。
    (2)調査源泉:
    洞爺湖温泉の9源泉について行った。
    (3)分析方法:
    各源泉から動力揚湯された温泉水は、現地にて泉温、pH、二酸化炭素、炭酸水素イオンを分析した。併せて、持ち帰ってから分析するため各種項目毎(硫化水素、重金属、チオ硫酸、アンモニア、ラドンなど)に試料の前処理を行った。各分析は鉱泉分析法指針に準じて行った。

  2. 分析結果

     分析結果を噴火(2000.3.31)以前の分析結果と併せ、表1に示す。各源泉は掘削深度76〜132mの浅井戸である。一般に、有珠山周辺の温泉水は源温泉水に近接する洞爺湖から浸透した地下水が混入し、その割合により種々の泉質を有すると考えられている。
     
    (1)噴火前後における9源泉の化学成分等の変動
     噴火以前の各源泉の成分分析は、1979〜2000年に2〜3回行われている。その調査時期は各源泉毎に異なるが、1回だけは地質研究所により1999年5月に行われている。
     噴火以前の1979〜1999年の間に得られた分析結果から、今回調査した9源泉の主要陽イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム)と主要陰イオン(塩化物、硫酸および炭酸水素)の総濃度は経時的な低下がみられる。特にその傾向は、噴火より10年以上前に調査した洞爺4号源泉、洞爺新5号源泉、洞爺新6号源泉、共同1号源泉、共同2号源泉および共同3号源泉の分析結果から明らかである。それらの源泉において成分毎の変化をみると、陽イオン成分ではナトリウム、カリウムおよびカルシウム、陰イオン成分では塩化物と硫酸が、それぞれ経時的な濃度低下を示している。一方、マグネシウムと炭酸水素は源泉毎に異なり、一定した濃度変動を示していない。したがって、泉質もCl型からHCO3型に大きく変化している例が多い。
     次に本調査で得られた分析値と噴火10ヶ月前(1999.5.21)の分析値を比較すると、主要陽イオンと主要陰イオンの総濃度は、噴火後上昇傾向を示す。また、その上昇割合は源泉毎に異なり、洞爺新新9号源泉、共同1号源泉、共同3号源泉、共同5号源泉および共同6号源泉で著しい。陽イオン成分ではナトリウム、カリウムおよびカルシウムが、陰イオン成分では塩化物と硫酸が、噴火後それぞれ濃度上昇を示している。特に共同3号源泉では、硫酸濃度が約2.3倍上昇している。一方、炭酸水素濃度は噴火後低下傾向にある。従って、噴火前後の泉質は表1に示すとおり、共同1号と共同2号源泉を除く7源泉の泉質変化は、塩化物及び硫酸濃度の上昇並びに炭酸水素濃度の低下による成分組成割合の変化に起因している。
     なお、噴火2ヶ月前(2000.1.21)に調査した洞爺4号源泉と共同3号源泉の分析結果をみると、主要陽イオンと主要陰イオンの総濃度は、噴火10ヶ月前のそれらと比較し、すでに濃度上昇を示している。
     以上、今回調査した洞爺湖温泉の源泉の主要成分総濃度は、源泉毎に異なるものの、噴火以前から経時的に低下していたものが、今回の噴火活動により再び上昇傾向を認めた。これらの結果は、火山活動の活発化を示す泉温の上昇ともほぼ一致している。
     個々の成分についてみると、マグマ起源と考えられている遊離二酸化炭素は共同2号源泉、共同3号源泉で噴火後高い値を示すが、他の源泉において、そのような傾向を示していない。また、水銀は全ての調査源泉で噴火後高い値を示し、今後、高温にてもっとも揮発しやすい成分であることから、マグマの消長を知るうえで注目される。その他、有珠山周辺の温泉水中のヒ素濃度は、火山地帯を反映してか元々高いものの、共同5号源泉、共同6号源泉において、噴火後若干高い値を示している。アルミニウム、亜鉛、銅も全ての源泉から検出されている。さらにマグマの発散物や火山噴出物、基盤岩石からの供給が推定されるラドンについても、測定を試みたが、その濃度は道内の温泉水で観測されるレベルと同程度である。

    (2)9源泉の化学成分等の現況
     噴火開始後約3ヶ月を経過した9源泉のpHは6.5〜6.8の範囲内で中性、その浸透圧は溶存成分総量の結果から全て低張性である。泉温は35.2〜73.8℃の範囲内で、洞爺4号源泉、洞爺新5号源泉および洞爺新6号源泉は温泉に、その他の6源泉は高温泉に分類される。
     公衆衛生上の安全確保を図る見地から、鉱泉を飲用に供する場合、ヒ素、フッ素、銅、鉛、水銀および遊離二酸化炭素の6成分についてはその濃度により飲用量に制限がある。本調査の結果、ヒ素(HAsO2)濃度から、洞爺新新9号源泉、共同1号源泉、共同5号源泉および共同6号源泉の飲用量は大人一人一日、それぞれ、860、270、480、720mLと制限され、飲用は食後にする必要がある。

    (3)まとめ
     火山活動に伴う温泉水成分の変動については、地理的、あるいは時間的要素などが関与するため、不明な点も多い。しかしながら、1979年〜1999年の噴火以前の分析結果から、洞爺湖温泉は主要成分濃度が経時的に低下傾向にあったことが明瞭に認められる。この原因としては温泉水の汲み上げ増加に伴う地下水の混入割合の増加が挙げられる。本調査で得られた結果を噴火10ヶ月前の分析結果と比較すると、主要成分総濃度は噴火後上昇傾向を示している。その原因としては、地下のマグマ溜まりからのマグマの上昇、もしくは地震活動による周辺の地殻変動が温泉水を形成する各地下水脈に何らかの物理的、化学的な変化を誘発していると考える。今後とも主要成分を含め、火山活動と密接に関連していると考えられる遊離二酸化炭素、硫化水素などのガス成分、水銀、ヒ素、ラドンなどの微量成分について、定期的に調査する必要があると考える。

表1 有珠山周辺温泉における化学成分等の分析結果

 源泉名湧出形態採水年月日泉質名液性pH蒸発残留物
(g/kg)
溶存物質c
(g/kg)
成分総計
(g/kg)
Na+
(mg/kg)
K+
(mg/kg)
Ca2+
(mg/kg)
Mg2+
(mg/kg)
Cl-
(mg/kg)
SO42-
(mg/kg)
HCO3-
(mg/kg)
No.1洞爺4号源泉動力揚湯1979.8.29ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.92.235545.041.9182.035.1429.0457.0924.0
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.9161.012.799.436.875.084.0765.7
2000.1.21bナトリウム・カルシウム・マグネシウム−炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.61.0851.5911.966179.114.1137.749.272.0146.7851.1
2000.7.13ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.51.1211.5061.838206.315.1115.240.6109.1216.7677.6
No.2洞爺新5号源泉動力揚湯1980.11.26ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.62.8143.3723.621758.052.1171.846.7813.2532.8767.2
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.5251.017.0127.041.4147.0277.0722.4
2000.7.13ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.51.7762.0882.307369.926.4146.043.1354.3366.7628.8
No.3洞爺新6号源泉動力揚湯1979.11.21ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.92.9333.1793.242750.053.0182.026.2893.4693.9366.8
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉*中性低張性高温泉6.1282.020.3146.043.5197.0280.0793.2
2000.7.13ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.61.8992.2772.530393.430.5166.141.3396.8402.8692.6
No.4洞爺新新9号源泉動力揚湯1995.10.24bナトリウム・カルシウム−塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.62.5472.9113.100626.045.8161.839.3673.5474.8671.2
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.4459.028.8138.040.2395.0471.0622.3
2000.7.13ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.63.3013.4333.596780.248.6205.151.51178 531.7435.9
No.5共同1号源泉動力揚湯1982.4.27ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.75.6715.8526.9261491 115.5308.149.71711 1702 224.2
1999.5.21aナトリウム−塩化物・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.71056 57.3219.026.81219 932.0410.0
2000.7.13ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.85.3195.4875.5991417 87.2302.440.71816 1218 344.0
No.6共同2号源泉動力揚湯1985.9.18ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.63.9654.0174.205965.860.3271.824.41204 780.1561.9
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.0389.026.3150.038.5311.0373.0738.3
2000.7.13ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.61.8592.2392.572381.129.1173.340.6389.7320.8750.7
No.7共同3号源泉動力揚湯1989.12.27ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.62.7633.3373.551724.153.5190.239.4672.3645.1812.9
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉*中性低張性高温泉6.5446.029.0159.041.5359.0468.0759.0
2000.1.21bナトリウム・カルシウム−塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.82.0702.5302.756493.632.9166.142.2454.0446.4726.5
2000.7.12ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉中性低張性高温泉6.72.8143.0593.234548.539.5253.448.8437.31074 512.5
No.8共同5号源泉動力揚湯1998.2.16bナトリウム−塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.62.4452.9563.124655.843.6160.641.0622.3548.4675.6
1999.5.21aナトリウム−塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉*中性低張性高温泉6.5614.038.5150.039.5608.0559.0605.3
2000.7.12ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.94.6844.6984.7741277 101.7206.727.71769 739.1231.6
No.9共同6号源泉動力揚湯1998.2.2bナトリウム−塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.62.7303.2383.405696.046.6168.149.7615.3797.1622.6
1999.5.21aナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉中性低張性高温泉6.6559.033.1150.051.6467.0703.0608.9
2000.7.12ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉中性低張性高温泉6.84.3704.4694.5431121 81.9214.752.41529 891.6292.6

 源泉名採水年月日F-
(mg/kg)
HS-
(mg/kg)
S2O32-
(mg/kg)
NH4+
(mg/kg)
Fe2+
(mg/kg)
Mn2+
(mg/kg)
Al3+
(mg/kg)
Hg
(μg/kg)
Pb
(mg/kg)
Zn
(mg/kg)
Cd
(mg/kg)
Cu
(mg/kg)
H2SiO2
(mg/kg)
HBO2
(mg/kg)
CO2
(mg/kg)
H2S
(mg/kg)
HAsO2
(mg/kg)
Rn
(10-12Ci/kg)
No.1洞爺4号源泉1979.8.290.7-----------200.058.7259.0--
1999.5.21a0.41.95.51.0--95.8-196.3--
2000.1.21b0.5n.d.n.d.n.d.6.63.7n.d.n.d.n.d.0.005n.d.n.d.125.73.8375.00.00.1
2000.7.130.6n.d.n.d.0.34.32.80.0520.09n.d.0.017n.d.0.008107.58.5332.00.00.055d7.5
No.2洞爺新5号源泉1980.11.260.70.00.50.20.1n.d.0.0170.0030.007174.654.5249.10.00.2
1999.5.21a0.7n.d.n.d.1.0137.4215.8
2000.7.130.8n.d.n.d.0.24.12.20.0600.012n.d.0.0120.0010.026126.618.0219.00.00.23.2
No.3洞爺新6号源泉1979.11.211.30.00.50.51.00.1n.d.0.0150.000167.643.862.50.40.3
1999.5.21a0.6n.d.n.d.1.5139.0263.9
2000.7.130.6n.d.n.d.0.33.62.70.0250.02n.d.0.011n.d.0.002124.020.8252.70.00.23.6
No.4洞爺新新9号源泉1995.10.24b0.7n.d.n.d.0.042.11.5n.d.n.d.n.d.0.003n.d.0.003180.233.4189.20.00.4
1999.5.21a0.9n.d.0.10.9218.3131.5
2000.7.130.8n.d.n.d.0.13.72.20.0800.05n.d.0.007n.d.0.024142.152.1162.80.00.53.0
No.5共同1号源泉1982.4.270.10.01.01.62.10.60.004n.d.0.0000.007201.340.173.90.02.4
1999.5.21a0.3n.d.0.30.7215.358.2
2000.7.130.3n.d.n.d.1.51.71.80.0440.060.0080.014n.d.0.060192.261.6112.30.01.629.9
No.6共同2号源泉1985.9.180.7n.d.0.20.10.62.1n.d.0.038n.d.0.006173.761.397.80.00.4
1999.5.21a0.7n.d.0.21.3152.3132.4
2000.7.130.6n.d.n.d.0.42.82.80.0270.080.0020.006n.d.0.013125.020.6333.00.00.223.2
No.7共同3号源泉1989.12.270.7n.d.0.20.20.62.20.0780.04n.d.--0.004153.341.6214.30.00.4
1999.5.21a0.7n.d.0.11.4--168.1-107.7--
2000.1.21b0.7n.d.n.d.n.d.0.92.8n.d.n.d.n.d.0.010n.d.0.02158.64.2226.00.00.2
2000.7.120.7n.d.n.d.0.31.82.70.0960.09n.d.0.009n.d.0.045119.219.7175.30.00.28.9
No.8共同5号源泉1998.2.16b0.3n.d.n.d.0.21.32.50.02n.d.n.d.0.1n.d.0.018176.327.4167.50.00.3
1999.5.21a1.1n.d.0.11.1191.9109.4
2000.7.121.3n.d.n.d.0.60.91.10.0250.06n.d.0.006n.d.0.027248.290.475.60.00.93.5
No.9共同6号源泉1998.2.2b0.7n.d.n.d.0.080.71.40.01n.d.n.d.0.1n.d.0.012182.856.2167.50.00.3
1999.5.21a1.22.00.21.1185.594.4
2000.7.121.1n.d.n.d.0.70.81.90.0540.15n.d.0.007n.d.0.088202.977.574.30.00.61.7
a:北海道立地質研究所分析、b:北海道薬剤師会公衆衛生検査センター分析、c:ガス成分を除く、d:Asとして、−:不明もしくは未測定
*:主要成分のみの分析結果より決定した

陽・陰イオン毎の主要各成分およびその組成の変化グラフ




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